新国立競技場と言えば、世界的に有名な建築家である隈研吾氏の計画案で工事が進められている競技場です。

しかし、新国立競技場の設計案は何度も変更が重ねられており、様々な問題がニュースで取り上げられました。

新国立競技場とは?

新国立競技場は、2020年に開催される2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる予定のスタジアムです。

元々、国立霞ヶ丘陸上競技場があった場所で、建て替え工事として計画が進められています。
国立霞ヶ丘陸上競技場は、1958年3月に竣工し、その後スタンドの増築が行われ1964年に開催された東京オリンピックのメインスタジアムとして使用されました。

国立霞ヶ丘陸上競技場

また、全国高等学校サッカー選手権大会や日本ラグビーフットボール選手権大会などの試合を行う場所として根付いており、また、5万人の観衆を収容できるビックスタジアムとしても知られていました。

しかし、2002 FIFAワールドカップが日本で開催される際に、国立霞ヶ丘陸上競技場を会場として利用することが検討されましたが、国際サッカー連盟(FIFA)が要求する会場規定として「観客席の3分の2以上に屋根が架設されること」が条件に挙げられていたため、計画は実現しませんでした。

時代が進むにつれて収容人数のもっと多いスタジアムの建設も進み、重要な大会はほかのスタジアムで開かれるようになり、競技場の老朽化、近隣へのも相重なって、次第に国立霞ヶ丘陸上競技場を利用した大会開催は減っていきました。

しかし、2000年代に入ってもコンサートなどで活躍しており、SMAPや嵐、ももいろクローバーZなどがステージとして利用しました。

 

オリンピックとの関わり

旧国立競技場は、2016年夏季オリンピックの東京招致活動において施設老朽化などの理由から球技場への転換案が出され、メイン会場としては別にスタジアムの建設をする計画が打ち出されました。

しかし、2016年夏季オリンピックはリオデジャネイロでの開催が決定したことにより、この計画はストップしました。

そして、再び2020年夏季オリンピックの開催地として立候補することになり、当初は「既存施設の活用」をテーマとして計画を進めていましたが、「施設の老朽化対策」「国際大会を開催誘致できる規格への改修(スタンド増設など)」が課題となったことにより、2012年に建て替えにより新スタジアムの建設が決まりました。

 

新国立競技場基本構想国際デザインコンクール

2012年に新国立競技場の基本構想案を決定するため、審査委員長を世界的に有名な建築家安藤忠雄氏として国際コンクールが開催されました。

細かい募集要項の基、デザイン案が募集されました。

応募総数は、国内から12案、海外から34案の計46件あり、技術調査・予備審査・一次審査で11件(海外7・国内4)に絞られました。

最終審査基準は、「未来を示すデザイン」「スポーツ・イベントの際の実現性」「技術的チャレンジ」「実現性」の四項目が挙げられ、最終的に3案まで絞られその中から最優秀賞が決定されたと言われています。

最終3案に選ばれたのは、ザハ・ハディド氏、Alastair Richardson、Cox Architectur、SANAA事務所+日建設計で、海外2案・日本1案という結果になりました。

そして見事最優秀賞にはザハ・ハディド氏のデザインした案が選ばれました。

もともと東京オリンピック招致活動において、新国立競技場の計画案を国際コンクールで募集することで国際性をアピールしたかったということもあり、もしかしたらそれも評価対象となったのかもしれません。

結果

最優秀賞

17番:ザハ・ハディド(イギリス)

優秀賞

2番:Alastair Richardson、Cox Architectur(オーストラリア)

入選

34番:SANAA事務所+日建設計(日本)

46案すべて紹介

当初のデザインコンクールに応募があった全46案です。

デザイン案No.1-23

https://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/compe/20140530_compereport_2_obosakuhin_1.pdf

デザイン案No.24-46

https://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/compe/20140530_compereport_2_obosakuhin_2.pdf

 

ザハ・ハディドとは

ザハ・ハディド氏は、新国立競技場基本構想国際デザインコンクールで最優秀賞に選ばれたことで、日本での知名度が一気に高まりました。

ここから様々な問題が絡み合うことでザハ・ハディド氏のイメージを良くないものだと認識してしまっている人も多いかもしれないので、

ザハ氏がどんな建築家なのかを少し紹介します。

 

有機的なデザインが定評の女性建築家

ザハ・ハディド 建築

世界的に有名な建築家は男性が多いのが事実ですが、ザハ・ハディド氏は女性の建築家として世界の建築界をリードしていました。

彼女の建築は男性的な直線の建築とは対照的な、有機的な曲線が美しい独特のデザインが特徴的です。

近未来的な印象を与える造形は多くの建築メディアに取り上げられており、建築やデザインが好きな人たちにとってザハ建築は、一種の観光地化しています。

主な彼女の建築を紹介します。

イタリア国立21世紀美術館

東大門デザインプラザ

アクアティクス・センター

彼女の作品はまだまだ存在しますので、気になる人は調べてみてください。

 

アンビルドの女王

先ほど紹介した事例は実際に建設された建築ですが、実は彼女のデザインしたものでデザイン的に現在の技術では建設が難しく建築することができないものも多いことも事実です。

そういった実際に建築することができない建築をデザインすることから、ザハ氏は「アンビルドの女王」と揶揄されることも多かったのです。

高く評価される反面、こういった批判的意見も存在していました。

 

新国立競技場案の白紙撤回

新国立競技場のデザイン案としてザハ案が選ばれた後、工事費の異常な高さが指摘され、デザイン案の白紙撤回という異例の事態が発生しました。

当初のコンクール募集要項には「総工事費は、約1,300億円程度を見込んでいる」という記載があったことから、それを大きく上回る約3000億円の総工費の試算が出されたことが大きく問題になりました。

これがもとで、ザハ案を白紙撤回する意見が出されましたが、国際的コンクールで一度決定した案を撤回することは、日本の信用に大きく関わることや、オリンピック招致活動の際にこのザハ案のデザインの提示によって、IOC総会で東京が五輪開催を勝ち取った経緯もあることから、ザハ案を押す意見もありました。

そこで、ザハ氏は減額案デザインを改めて発表しました。

↑改訂案

↓原案

コンクール時の流線形の洗練されたデザインからは大きくかけ離れたデザインとなりました。

ザハ氏本人も本当は納得できないデザインであったと思いますが、「クライアントの要望に応えることも大切」と述べていることから

予算に合わせたデザインをするように努力したものだと思われます。

しかし、改訂案もむなしくそれでも予算に収まらないという試算が出されました。

このデザインの建築の総工費が高騰した理由としては「巨大なアーチ構造を持つ新競技場の特殊性」により、キールアーチが鉄骨が3次元構造で特注品となり、高度な技術を持つ業者が数社しかなく、価格競争が起きにくいからなどが挙げられていました。

従来のオリンピックメインスタジアムの総工費との比較

とは言っても、当初の案の3000億円がどれくらい高額なのかあまりピンとこないかもしれないので、分かりやすくするために従来のオリンピックメインスタジアムの総工費と比較してみます。

リオ 約550億円

ロンドン 約800億円

北京 約500億円

アテネ 約350億円

シドニー 約680億円

ザハ案 約3000億円

こうして比較してみると、桁が違うことが分かります。

そのため、建築的に評価される以前に金額的に批判されてしまったということなのでしょう。

 

新国立競技場再プロポーザル

新国立競技場 隈研吾案

ザハ案が白紙撤回されたことにより、再び設計者を選定するためのプロポーザルが開催されました。

このプロポーザルでは前回の総工費問題から、デザイン者(設計者)だけでなく、工事を請け負う建設会社とタッグを組んできちんと工事が可能かどうかを示すことも募集要項に組み込まれました。

そして選ばれたのは、隈研吾氏のデザインによるものです。

このデザイン案のスタジアムが現在工事が進められている建築です。

隈研吾氏の得意な木のデザインが特徴的なスタジアムです。

完成が見られるのも近いですね。